一般的に使われている「破産」とは、負債を抱えすぎて自己破産するようなケースを指しますが、FXの場合は直接的な理由で多額の負債を抱えて自己破産するようなケースはそれほどありません。
確かに一昔前はFXで破産者が出ることは珍しくない事実でした。
ただ、国のテコ入れにより、個人口座のレバレッジが25倍に規制されたこと(但し国内に限る)や、強制ロスカットの制度が導入されたことにより、FXトレードによる破産はほとんどなくなりました。
それでも重大指標が発表された後や、相場が大暴落した後には必ずといっていいほど、ネットやFX掲示板では「破産だ!」「首くくるしかない!」などと大騒ぎになっていますよね。
FXは破産しないシステムになっているハズなのに、何故でしょうか?
実はここに、初心者に限らずFXトレーダーなら誰もが陥りやすい仕掛けがあるんですよ。
FXの基礎知識
FXってなんだっけ?
FXとは、外貨を売買することで為替変動から発生する利益を得る投資のことです。
また、金利が高い国の通貨を持っておくことで、日本との金利差を儲けにすることもできます。
破産する理由とは?FXに存在するリスク
FXにはさまざまなリスクが存在します。
例えば、急激に相場が変わってしまい、大きな損失が出てしまった。ポジションを土日間も持っていて、月曜日になったら大幅に異なっていた。
予測できるものもあれば、予測できないものもあります。
前者については、対策をしておくこと。
後者については、そうなったらどう動くべきかを考えておきましょう。
FXで破産する原因とは?
ハイレバレッジで破産する?!
レバレッジとは、実際の資金の何倍もの取引額でトレードする仕組みです。
例えば$1=100円で1万ドルの取引をする場合、実際には100万円の資金を必要とします。
これがレバレッジ5倍であれば、なんと約20万円の証拠金で取引することが可能になります。
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- レバレッジ10倍であれば約10万円
- レバレッジ25倍であれば、4万円
しかしどんなに少ない証拠金で取引出来たとしても、1万ドルを動かしているのは紛れもない事実なので、レバレッジが高ければ高いほどわずか1円の値動きあっても実際の損益は1万円の損失、または利益と大きくなります。
少額でFXを始めることができて、わずかなpipsであっても大きな利益を容易に出せるためハイレバは人気がありますが、その分の損失も大きい諸刃の剣となりえるため、日本ではレバレッジの最大倍率が規制されています。
しかし日本で規制されているハイレバでも、海外ではそうではありません。
海外口座だとレバレッジ数百倍~千倍なんて口座もあるため、海外口座を開設してハイレバを楽しむデイトレーダーも多く見受けられます。
いくらハイレバで勝負しようが、これも直接的な破産に結びつくことはそこまでありません。
何故なら海外のFX業者であっても大抵の場合、強制ロスカットで証拠金は保護されます。
それこそ自分で強制ロスカット率を0%に指定するなどして、無謀な挑戦を挑まない限りは、FX口座に入れておいたお金が0円になることはないのです。
余裕資金以外のお金でFX
FXを行う上での鉄則として「FXは余裕資金で運用しましょう!」と、どこのFX業者も注意事項として掲げています。
FXはあくまで投資。
だから余裕資金を運用資金とするのが当然であり、もしも投資資金が余裕資金ではなく使ってはいけないお金だった場合、それは投資ではなく博打になってしまいます。
例えば生活費の一部だったり、借金だったり、もっとひどい場合、営業マンが回収する月末までに入金すればいい、会社の売上金だったりなど。
なんとしても稼ぎたいという欲から、使ってはいけないお金に手を出すわけですが、使ってはいけないお金を使い込むことで、「絶対に負けられない」後がない精神状態に追い詰められてしまいます。
そうなるともはや手遅れ、悪循環。
FXを行う上で一番大事な「冷静さ」が完全に失われたトレードは、相場分析も冷静には行えません。
必要資金を失いたくない為に、損切りしないトレードを繰り返し、ナンピンで損失を耐え踏ん張り続けて、耐えきれなくなった時(必要資金の投入すら事切れたとき)、強制ロスカットで必要証拠金以外の資金を失うことになります。
借金ならまだしも、もしも会社の売上回収金などを証拠金としてFX口座に入れてしまった場合は「横領」という立派な犯罪になりますし、夫婦で貯めたお金をFXにつぎ込んで全額溶かすことも主婦に多い悲鳴の一つですね。
マイホームを買うために貯めていた1000万を効率よく増やそうとしたら溶けた!とか、子供の学資を使い込んだとか、掲示板の書き込みなどで本当によく目にします。
そうなると家庭も職場も無くし、自己破産するしか道がなくなってしまうことも十分にあり得るわけです。
余裕資金以外のお金を投資に使い、社会的地位を抹消され、全てを失う破産者になる方が、危険なことだと肝に銘じておきましょう。
借金を元手にFXをしても、FXでその借金が完済出来た人はいません!
取引するときは余裕のあるお金で、常に冷静にやりましょう。
損失確定を嫌がる
損失確定とは、今のポジションを決済してこれ以上の損失を広げさせない方法で損切りともいわれています。
損失確定を嫌がる原因として、「このポジションが急に良くなるんじゃないか」という心理があります。
しかし、思っている方向と逆の方に行ったらどうでしょうか。これ以上に損が多くなります。
まだいける、と思わずさっさと決済をして損失確定をしましょう。
運と実力の違いを理解していない
なぜあなたは勝ちましたか?思い出してみてください。
もし心当たりがない場合は、それは運です。今のまま取引を続けていると運だけでは勝てなくなり、大損に繋がります。
チャートやテクニカル分析について勉強して、運ではなく実力でも勝てるようにしておきましょう!
破産から守ってくれる強制ロスカット!体験談も紹介
強制ロスカットの仕組みについて
トレードをしていて、強制ロスカットにあったことはありますか?
なんて思ったことありませんか?こんなことは、トレードをやっていれば誰しもがこの苦汁を味わう可能性があります。
強制ロスカットとは、必要証拠金維持率がFX業者の定める率を下回った際に発動されるものです。
例えば、必要証拠金維持率100%を設定しているFX業者の口座に総資金100万円を預け10万通貨のトレードをした場合
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- ドル円100円
- レバレッジ25倍
- 必要証拠金:40万円
となります。(1万通貨の必要証拠金4万円)
この条件下でドル円10万通貨を売るなり買うなりした場合の、強制ロスカットを考えてみましょう!
必要な証拠金が40万円となるので、100万円の資金が40万円まで減った瞬間に強制ロスカットがかかります。
60万円の損失で強制ロスカットが発動するわけですから、手元には証拠金として担保にとられていた約40万円(決済がすべらなければ)がほぼ残る算段になります。
これがなにを意味するかわかりますか?
どんなに酷い損失を経験しても必ず元本充当分残り、基本的には無一文にはならないです。
20歳匿名
別にぎりぎりの証拠金でやっていたわけではなく、3円くらいの下落には耐えられるくらいの余裕はあったんですが、一晩にして1、2時間の間に5円下落した時がありまして、ええドル円です、はい、んでこのときに思いっきり強制ロスカットに合い、一発退場させられてしまいました。
実際にトレードしているときは、邪魔でしょうがない強制ロスカットですが、後に冷静になって考えてみると、この強制ロスカットで救われていることがわかります。
強制ロスカットがなければ、5円分溶けてなくなるわけですからね。
5円といえば、1万通貨で50万、5万通貨だと250万、10万通貨になれば500万なわけですから、強制ロスカットがなかった時代、いかに破産者が後を絶たなかったのかがよくわかりますよね。
ロスカットを防ぐためには?
ロスカットにならない方法、それは証拠金の追加が手っ取り早いです。
しかし、ロスカットになりそうだと思ったら証拠金を継ぎ足す。またロスカットしそうになったら継ぎ足すではループしてしまい、お金が無くなってしまいます。
そこで証拠金追加をしなくてもロスカットを防げる方法を紹介します。
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- ポジションを土日や雇用統計発表前といった経済指標に持ち越さない
- レバレッジをかけ過ぎない
- 損切りをためらわない
FXで自己破産ってあり?
FX 自己破産の仕組みと方法
自己破産とは、借金の返済義務を放棄することができる方法です。しかし、ある程度の家財を売ったりしないといけないので最終手段といった方が正しいです。
また、自己破産をすることでさまざまな制限を受けます。
リストに登録される
信用情報機関というところが作るリストに金融事故情報として登録されるため、数年間キャッシュカードを作ったりローンを組めなくなったりします。
約10年間は新しい借り入れができなくなると思っておきましょう。
何年か過ぎればリストから消えるので、それ以降は借り入れができるようになります。
特定の職業・資格の制限を受ける
一部の職業に就けなかったり、その職業に就くために必要な資格が無効と同じ扱いをされたりすることがあります。
制限を受ける職業
- 弁護士 (弁護士法第七条 五)
- 税理士 (税理士法第四条 三)
- 警備員 (警備業法第三条 一)
- 旅行業者 (旅行業法第六条 六)
- 質屋 (質屋営業法第三条 五)
この他法律によって制限を受ける職業が多くあるので、気をつけておきましょう。
FXで自己破産は認められるのか?
結論からいうと、認められます。
ただし、以下の条件を満たさないと自己破産は認められません。
- 破産手続や免責手続において虚偽の説明・陳述をした場合
- 浪費やギャンブルによって負債を増やした場合
- クレジットで購入した商品をすぐに換金して負債を増やした場合
- 財産を隠したり,価値を減少させるような行為をした場合
- 支払能力について,債権者を欺いた場合
- 過去7年以内に確定した免責許可決定を受けている場合
出典:裁判所 破産の手続・自己破産の申立てを考えている方へ
万が一免責不許可になったら?
免責不許可というのは、自己破産を申請したのにもかかわらず、免責が許されず自己破産が認められないことをいいます。
自己破産が認められない=借金の支払い義務が消えていない
まず免責不許可になったら、1週間以内に即時抗告というのをすることで高等裁判所に再審ができます。
高等裁判所で判断が覆れば、自己破産が認められます。
申請した内容を偽装してなかったり、何回も自己破産を申請してない限りは免責許可が出やすいです。
もしも、自己破産が認められなかった場合、借金が全額免除にはなりませんが、個人再生や任意整理といった手続きをして負担を少しでも減らすことができます。
FX業者からの追証で莫大な借金を背負うこともある
先ほども少し説明しましたが、FXには強制ロスカットというシステムがあるため、よほどのことがない限り、FX会社から追証請求されることはありません。
追証とは必要証拠金が必要証拠金維持率を下回って元本割れを起こした場合、FX業者が投資者に替わりその不足分を立替しているため、後に不足分として投資者に請求される不足金のことです。
この事案が発生するケースは、急な値動きによってシステムがついていけずに強制ロスカットの履行が間に合わなかったケースなど、相場が大荒れの時にたまに起きることがあります。
最近ではスイスフランの悲劇とかありましたね。
一瞬にして2000pips以上動いたそうで、どこのチャートもフリーズしたため、もちろん強制ロスカットも機能せず。
再び動き出した時には、チャートの前で呆然とするしかなかったトレーダーも多かったと聞きます。
こんな不可抗力な相場であっても、ポジションを持っていれば追証を支払う義務は発生するわけです。(もちろん利益がでた場合、受け取る権利もありますがほんの一握りしかいません)
こんな相場で追証が起きる場合、請求される金額も半端ではなく10,000通貨もっていたとしても2,000pipであれば20万円の損失、100,000通貨であれば200万の損失ということになります。
そしてこれはポジションを持っている以上、投資者が支払わなくてはいけない債務(借金)です。
相場に身を投じている以上、ポジションを保持している間は、常に追証のリスクがあります。
ロスカットも、損切りのための逆指値も意味がありません。
実際にスイスフラン暴騰では、多くのトレーダーが莫大な借金を抱えたそうですし、もしもこのような出来事が自分の身に起きてしまい、FX業者から払いきれない金額の追証請求がきたとしたらどうすればいいのでしょう?
基本的に追証を一括で支払えない場合、債務者としていつ財産を差し抑えられてもおかしくない状態になります。
自分の持ちうる資産で借金清算が出来ない場合、「自己破産は認められるのか?」という問題にぶつかりますが、一般的にはFXのようなギャンブル性の高い投資で莫大な借金が出来た場合、自己破産は認められないとされています。
しかし実際には申請してみると、自己破産を認めてもらえるケースの方が多いみたいです。
だからといって絶対認められるわけではありませんし、そもそも自己破産しなければいけないような状況を作り出さない為にも、日頃からリスク管理を徹底する習慣を身につけておきましょう。
FXで破産のまとめ
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- FXのリスクを常に頭の中に入れておこう
- FXで借金になりそうな要因を覚えて、危ない取引をしないこと
- 引き際を覚えておこう
FX業者からの借金は自己破産でなんとかなったとしても、夫婦共有の貯金や会社のお金を勝手に使い込み溶かしてしまった場合には、自己破産のような法的救済はありません。
夫婦間のものであれば「即離婚!」なんてことにもなりかねませんし、会社のお金だった場合は懲戒免職だけでなく、横領の罪で訴えられることだってあります。
FXの利益に目がくらみ、人のお金を使い込み、その行きつく先がお金と家族と仕事を無くす。
私は自己破産より、後者のほうがよっぽど怖いと感じます。
FXにおける破産とは、余裕資金以外のお金に手を出した時に、すでにカウントダウンは始まっています。
いま、貴方の口座に入っている資金は、本当に余裕資金なのか、仮に明日溶けたとして自分以外に泣く人はいないか、今一度胸に手を当てて考えてみてくださいね。